河井昭成政務調査会副会長(衆議院議員/滋賀1区)は30日、国民民主党を代表し、衆議院本会議で議題となった警察官職務執行法改正案(匿流スマホ遠隔解析法案)に対する質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。

警察官職務執行法の一部を改正する法律案に対する本会議質問原稿

2026/10/30
衆議院議員 河井昭成

 国民民主党・無所属クラブの河井昭成です。ただいま議題となりました警察官職務執行法の一部を改正する法律案について、国家公安委員会委員長に質問いたします。
 近年、匿名・流動型犯罪グループ、いわゆるトクリュウによる詐欺や強盗事件が深刻化しています。
 被害に遭っているのは、長年働いて蓄えてきた老後の資金を奪われる高齢者をはじめ、平穏な日常を送っていたごく普通の人々です。財産だけでなく、強盗によって命まで奪われる事件も起きています。
 何の落ち度もない人々が、ある日突然、こうした犯罪の被害に遭い、これまでの生活を壊されてしまう。このような理不尽な犯罪から国民の命と暮らしを守るためには、犯人の検挙はもちろん、次の被害をいかに防ぐかが大変重要であるといえます。
 犯罪グループは匿名性の高い通信アプリなどを使い、指示役が姿を見せないまま実行犯を動かし、犯行を繰り返しています。犯罪の手口が高度化する中で、警察も新しい技術を活用するなど高度化に追従し、犯罪グループに対応していく必要があります。
 今回の法改正は、犯罪グループが使用するスマートフォンなどから、被害防止に必要な情報を遠隔で取得する、新たな仕組みを導入するものです。新たな技術や制度によって何が可能となり、どのような効果が期待できるのか、を明らかにする必要がありますが、適切かつ厳格な要件、手続のもとで、犯罪グループの手口の高度化に対応し、犯罪被害を防ぐために必要な技術を活用していかなければならない状況にあることは理解するところです。
 しかし一方で、個人情報の保護に対する意識が高まっている昨今、基本的人権の尊重、プライバシーや表現の自由など、国民の権利が損なわれることがあってはなりません。こうした権利をどのように守るのか。また、たとえわずかであっても権利を制限するのであれば、その行為に対してどのようにして正当性を担保するのか、などについても明確にすることは、国民の信頼を得る上で、極めて重要であると考えます。これらの観点から、以下、質問いたします。

①まず、特殊詐欺の被害が拡大している要因について伺います。
 令和4年に約371億円だった特殊詐欺の被害額は、令和7年には約1,423億円と、およそ4倍に増加しています。さらに、SNS型投資・ロマンス詐欺を含めると、令和7年の被害総額は約3,257億円に上り、今年もすでに8月末時点で約2,361億円に達しています。
 警察もこれまでさまざまな対策を講じてきましたが、被害の拡大に歯止めがかかっていません。
 政府は、ここ数年で特殊詐欺の被害額がこれほど増大した主な原因を、どのように分析しているのでしょうか。犯罪グループの組織形態や犯行手口の変化、SNSや秘匿性の高い通信アプリの悪用などが言われていますが、改めて見解を伺います。

②次に、遠隔解析の技術と従来の捜査手法との違いについて伺います
 これまで警察は、通信傍受によって通信内容を把握したりするなど、さまざまな技術を活用してきました。
 一方、今回の遠隔解析は、スマートフォンなどの端末を直接押収することなく、端末に記録された情報を遠隔で取得する仕組みです。
 犯罪グループが利用する通信アプリには、通信内容が高度に暗号化されているものもあり、必要な情報を把握することが難しくなっています。
 今回の遠隔解析は、通信傍受などの従来の手法と、技術的な仕組みや取得できる情報にどのような違いがあるのか伺います。
 また、従来の手法では対応が難しかった犯罪に対して、どのような対応が可能となり、どの程度の被害防止効果を見込んでいるのでしょうか。技術の詳細を明らかにできない事情は理解しますが、新たな制度を設ける以上、分かりやすくお示しください。

③ 次に、遠隔解析の位置づけについて伺います。
 今回の法案では、第9条第11項にて、「被害防止電子計算機調査等の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」と規定されています。
 つまり、犯人を検挙するための証拠収集などの犯罪捜査ではなく、犯罪被害の防止を目的とする行政調査として位置づけられています。
 今回の遠隔解析を、犯罪捜査ではなく行政調査として位置づけた理由と、犯罪捜査を目的とした権限行使が行われないよう、どのように担保するのか伺います。

 実際には犯罪グループが使用する端末から情報を取得するため、その過程で犯人の特定や犯罪の証拠につながる情報が得られることも考えられます。
 こうした情報は、犯罪被害の防止を目的として取得されたものであっても、後の犯罪捜査において証拠として利用される可能性があります。
 そこで、被害防止のために遠隔解析で取得した情報を、後の犯罪捜査に利用することを想定しているのか。また、利用する場合には、どのような手続や制限が必要となるか、伺います。

④ 次に、遠隔解析の実施における適正性の確保について伺います。
 遠隔解析を行うには、あらかじめ、地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官の許可を得なければならないとされています。制度の乱用により、国民の権利を損なわないように厳格に要件が定められているからであり、これは、重大犯罪による被害発生の高度な蓋然性、緊急性・他の方法での代替が困難であること、犯人の端末への限定など、これらの厳格な要件を満たしているかを裁判官が精査することで調査の適正性を確保する仕組みと理解しています。
 その上で、裁判官が、調査の必要性や正当性、妥当性を十分に判断できるよう、警察はどのような客観的な根拠や資料を示すのでしょうか。司法審査が実質的に機能することを、どのように担保していくのか、政府の見解を伺います。

⑤ 次に、調査対象となる端末の限定について伺います。
 遠隔解析が、犯罪とは無関係の人が使用する端末に対しても実施されるのではないかという懸念があります。当然ながら、犯罪と関係のない国民の端末まで調査対象が広がらないよう、適切に運用することが重要です。今回の制度では、重大犯罪の犯人が相互連絡などに使用したと認められる合理的な理由がある端末を対象としています。
 政府は、どのような客観的な事実に基づいて、犯人が使用した端末であると判断し、犯罪と無関係な人の端末が誤って調査対象となることを防ぐのか伺います。

⑥次に、端末から取得する情報について伺います。
 今回の法案では、犯罪被害の防止に必要な情報を、犯罪グループが使用する端末から取得できるとされていますが、具体的にはどのような情報を想定しているのか、お示しください。
 また、必要な情報を探す過程では、事件とは関係のない家族や知人との通信などが含まれる可能性もあります。法案では、裁判官が許可した範囲外の情報について、提供の禁止や消去を定めていますが、そもそも不要な情報をできる限り取得しない方が良いことは言うまでもありません。
 調査に必要な情報を適切に限定し、無関係な国民のプライバシーの保護や通信の秘密を保護するため、どのような措置を講じるのか伺います。

 情報の取得範囲を適切に限定することに加え、調査を受ける本人の権利保護も重要です。今回の遠隔解析は、本人が知らないうちに端末内の情報を取得するものであり、従来の行政調査とは異なる性質を持っています。
 本人が調査の実施を認識できない以上、その場で調査の根拠や範囲を確認したり、異議を述べたりすることはできません。
 厳格に運用されることが前提ではありますが、万一、不当な情報取得が行われた場合、本人がその事実を確認し、権利の救済を求められることは必要であると考えます。
 遠隔解析の特殊性を踏まえ、調査を受けた本人が、その適法性を確認し、不当な権限行使に対して救済を求められるよう、どのような仕組みを確保するのか伺います。

⑦ 続いて、令状の一回性の原則との整合性と継続的な調査の制限について伺います。
 刑事訴訟法上の捜索・差押えでは令状の一回性が原則とされています。一方、本制度は刑事訴訟法上の令状ではなく、裁判官による許可という仕組みです。
 そこで確認します。一つの許可状に基づいて、同一端末に繰り返し接続し、情報を取得することは可能なのでしょうか。
可能であるなら、その回数や時間についてどのような限界があるのでしょうか。

 その一方で、犯罪グループの活動は刻々と変化することから、被害防止に必要な情報が得られなかった場合など、再度の調査が必要となることも考えられます。
 しかし、繰り返しの調査が、結果として継続的な監視と同じ状態にならないようにする必要があります。
 政府は、再度の調査に当たり、その必要性をどのように判断し、事実上の継続的な監視とならないよう、どのような制限を設けるのか、見解を伺います。

⑧ 次に、遠隔解析によって取得した情報の真正性について伺います。
 遠隔解析によって取得した情報の活用に当たっては、その情報が対象の端末から確かに得られたものであることを、事後的に確認できることが必要不可欠です。
 特に、遠隔解析は端末を直接押収することなく情報を取得するものであり、その取得元を客観的に確認できる仕組みが必要であると考えます。
 取得した情報が裁判官の許可を受けた対象端末から確かに得られたものであることを、どのように担保し、事後的な検証を可能にするのか、お答えください。

⑨ あわせて、遠隔解析の透明性の確保について伺います。
 遠隔解析の適正な実施と透明性を確保するためには、実施後の客観的な監督体制を整備することも重要です。
 今回の法案では、公安委員会への報告が設けられていますが、公安委員会が実際に調査の適正性を確認するためには、取得した情報の範囲や消去の状況などについて、専門的な知識に基づいた判断が求められます。
 公安委員会による監督の実効性を確保するため、技術的な専門性をどのように確保し、外部の専門家の活用も含めて、どのような体制を整備するのか伺います。

 また、電話通話などの傍受を行う通信傍受法では、政府が毎年、傍受令状の請求および発付の件数、傍受の実施をしている間における通話の回数等、実施期間、罪名、逮捕者数などを国会に報告し公表することが義務付けられています。透明性を高めるためには、通信傍受法のように遠隔解析の実施状況について、国会への報告を義務付けるなど、何らかの形で、実施状況を公表する必要があるのではないかと考えますが、見解を伺います。

⑩ 次に、海外に所在する端末への遠隔解析について伺います。
 匿名・流動型犯罪グループの中には、海外に拠点を置き、国内の実行犯に指示を出すものもあります。
 今回の遠隔解析では、こうした海外に所在する端末についても、調査対象となることが想定されます。
 一方、海外の端末への遠隔解析は、相手国の主権や国際法との関係を慎重に考える必要があります。
 また、犯罪被害を未然に防ぐためには迅速な対応が求められるものの、相手国との調整に時間を要することが考えられます。
 海外に所在する端末が調査対象だった場合の遠隔解析の対応について伺います。

⑪ 次に、実施体制と予算措置について伺います。
 今回の法改正では、専門的な知識と能力を持つ警察官を、警察庁長官が被害防止電子計算機調査官として指名することとされています。
 高度な技術を必要とする制度だけに、専門人材の確保・育成が欠かせません。
 また、技術の進歩に対応するためには、継続的な研究開発や設備の更新、安全管理などにも相応の費用が必要です。
 さらに、遠隔解析で情報を得たあとは、犯罪被害防止のために迅速で適切な警察活動、重点的な警備・警ら、防犯指導などを実施する必要があり、警察庁と都道府県警察の連携を強化するとともに、現場の対応力を高めることも重要だと考えます。
 遠隔解析の導入に当たり、匿名・流動型犯罪グループによる特殊詐欺や強盗などによる犯罪被害防止のために、どのような実施体制を構築し、必要な人材と予算をどのように確保していくのか伺います。

⑫ 次に、遠隔解析能力の維持・向上について伺います。
 スマートフォンや通信アプリは、基本ソフトの更新やセキュリティ機能の強化など、技術的な進歩を続けています。
 そのため、制度の導入時には解析できる端末であっても、将来的には同じ方法で情報を取得することが困難になる可能性があります。
 犯罪グループが利用する端末や通信手段も変化していく中で、遠隔解析を犯罪被害の防止に役立てるためには、こうした技術の進歩に継続的に対応していく必要があると考えます。
 スマートフォンや通信アプリの技術的な変化に対応し、遠隔解析の実効性を維持するため、解析能力の確保と向上にどのように取り組んでいくのか、お答えください。

⑬ 最後に、匿名・流動型犯罪グループによる犯罪の未然防止について伺います。
 今回の遠隔解析によって犯罪被害の防止を期待するとのことですが、そもそも犯罪に加わる人を生まない取組も重要です。
 特に、若い世代が、いわゆる「闇バイト」を通じて犯罪に巻き込まれることが今後も懸念されます。今年5月には、栃木県で高校生等が実行役となった強盗殺人事件も発生しています。
 SNSで高収入などをうたう募集に応じ、個人情報を握られ、脅迫されて抜け出せなくなるケースもあります。「闇バイト」に安易に応募し、重大な犯罪に加担している自覚が薄い若者が犯罪に加わり、重い罪に問われることがないよう、犯罪から守るため、家庭・地域社会・学校での教育やSNS事業者との連携、相談体制や離脱支援の充実が必要です。
 警察による取締りに加え、文部科学省やこども家庭庁、通信事業者など多様な機関とも連携し、青少年の犯罪加担をどのように防いでいくのか、見解を求めます。
 今回の法改正を、実際の犯罪被害の防止につなげていくことが重要です。
 犯罪に巻き込まれる人も、被害に遭う人も減らしていくために、新たな技術を活用するならば、必要な体制を整備するとともに、国民に信頼してもらえる制度にする。その上で、国民が安心して暮らせる社会を実現することこそ、政治に求められた責任であることを申し上げ、私の質問を終わります。

 

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