浅野哲税制調査会長(衆議院議員/茨城5区)は20日、国民民主党を代表し、衆議院本会議で議題となった「租税及び社会保険料による負担の軽減のための飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の支給に関する法律案」(飲食料品消費減税・支援金法案)に対する質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。
消費減税及び就業者負担軽減支援金法案に対する質問
令和8年10月20日
国民民主党・無所属クラブ
浅野 哲
冒頭
国民民主党の浅野哲です。私は、只今議題となりました政府提出法律案に対し質問いたします。国民民主党は、物価高に苦しむ国民の負担軽減に賛成です。しかし政府案は、来年4月からの減税法案であると同時に、2年後の「中間層大増税」を招きかねない内容です。私たちは減税に反対しているのではありません。2年後に押し寄せる「中間層大増税」に反対しているのです。また、この法案には二つの大きな空白があります。一つは、減税が始まるまで、低所得の方への対策がないこと。もう一つは、税率を8%に戻した後、支援金の対象外となる中間層への支援がないことです。現役中間層の暮らしが軽んじられているのではないでしょうか。本日私は、現役中間層の負担軽減を重視する立場から質問いたします。
低所得者向け支援の空白
(問1)国民民主党の提案で実現した年収の壁の178万円への引上げにより、この年末の年末調整では、働く方々に減税分が戻ります。しかし、住民税非課税世帯などには、この恩恵は届きません。今月も3,000品目以上の食料品が値上がりし、電気・ガスの補助も九月で終わりました。減税が始まるのは来年4月です。国民が困っているのは、来年ではなく「今」です。私たちは、今年度の予備費を活用した年内の給付を提案しています。寒い冬を前に、電気・ガス・灯油代を含め、来年4月までの間、低所得の方々への対策が示されないままでよいのでしょうか。総理はどう手を打つおつもりなのか伺います。
(問2)年金で暮らす方や、病気や障害で働けない方は、支援金の対象外です。政府は、働いていない高齢者などへの対応を2030年までに決めるとしていますが、これは一刻を争う問題です。年金は物価ほど増えず、税率が8%に戻る2029年4月以降、問題はさらに深刻になります。この空白の間、支援の届かない方々の暮らしをどう守るのか。総理の答弁を求めます。
支援金は誰に届くのか
次に、支援金について伺います。法案には対象となる年収も金額も書かれておらず、総理は来春までに決めると答弁されています。
(問3)総理は、海外の例から、日本では約2,000万人が対象と答弁されました。公的統計で逆算すると、対象となる年収の上限は、おおむね210万円から280万円です。報道では年収300万円以下ともされています。支援金の満額はいくらで、年収いくらからいくらまでの方が満額を受け取れるのですか。また、年収がいくらを超えると、支援金はゼロになるのですか。これらが分からなければ、2年後に誰が実質的に増税になるのかも分かりません。明確にお答え下さい。
(問4)下限も問題です。政府の会議では年収53万円、74万円、106万円の三案が示され、106万円なら約1,100万人が対象外になります。保険料を納めながら働く、最も収入の少ない方々はどう扱うのですか。国民民主党は、週10時間以上働き、社会保険料を納めている方は対象にすべきだと考えます。総理の見解を伺います。
(問5)来年度の先行支給分は総額6,000億円、2,000万人で割れば一人平均3万円にすぎません。子どもがいる場合には、いくら加算されるのですか。具体的にお示し下さい。また、公金受取口座の登録率は5割程度にとどまっています。登録していない方や高齢の方には、どう届けるのですか。お答えください。
(問6)総理は、支援金の対象者でも、全員が消費税減税分を上回る支援を受けられるとは限らないと認めました。では、消費税減税を上回る支援を受けられるのは、年収いくらまでの方ですか。また、その年収の方の場合、2027年度からの2年間に受ける消費税減税と支援金の前倒し分はあわせていくらで、2029年度以降の支援金は年いくらになるのですか。具体的にお示し下さい。さらに、対象外となる約4,000万人の働く方々は、何の支援もないまま税率の引上げを迎えます。この方々にどう説明するのか伺います。
2年後の崖
ここからは、私たちが最も懸念する「2年後の崖」について伺います。
(問7)2029年4月、食料品の税率は8%に戻ります。年収300万円程度以下の方には支援金が本格支給される一方、それを超える中間層は給付ゼロ。いわば「年収300万円の壁」です。私たちの試算では、中間層世帯の負担は、2030年には今年より年2万円から7万円増えます。まさに中間層大増税です。年収300万円、500万円、700万円のモデル世帯で、税率が戻った後の負担がどう変わるのか、政府の試算をお示し下さい。
(問8)しかも、負担増は二段階です。所得税控除額の178万円までの上乗せは2027年分で終わり、2028年には多くの方が増税になります。年収300万円から600万円の単身の方で年2万円から4万円です。翌年には消費税が8%に戻り、2年連続の負担増は避けられません。政府はこの二段階の負担増を認識していますか。所得税控除額の上乗せ措置は恒久化すべきですが、総理の見解を伺います。
(問9)過去、消費税率の引上げは、景気を理由に二度延期されました。そのたびに、当時の総理は国民に信を問いました。今回、総理は8%への復帰に景気条項を設けないとしていますが、その意図は何ですか。一方で総理は、大規模災害などの際は臨機応変に判断すると答弁されています。最終判断局面において、景気や国民生活への配慮を完全に否定しているわけではない、という理解でよろしいですか。また、景気を理由に延期する場合には、国民に信を問う必要があるとお考えですか。
(問10)この判断は、明確な基準に基づき、透明性をもって行われるべきです。税率の操作は、時の総理の責任のもとではなく、憲法84条の租税法律主義に基づいて行われるべきです。従って、2年後の税率復元を延期し得る条件を、あらかじめ法律に書くべきではありませんか。総理の見解を伺います。
総額はいくらかかるのか
(問11)食料品の減税は年約4.3兆円、2年で約9兆円です。これに支援金、農家や外食への支援、レジ改修支援が加わり、レジ改修と農家支援だけで、すでに約3,000億円が見込まれています。総理、これらを合わせた総額は、いくらになる見通しですか。明確な数字でお答え下さい。
(問12)農家や外食への支援が必要になるのは、消費税を下げるからではなく、「飲食料品だけ」を下げる複数税率だからです。農家は、肥料や燃料に10%の税を払い続ける一方、売上の税は1%になり、手取りが減ります。外食も、店内で食べれば10%、持ち帰れば1%と、その差が9ポイントに広がり、地域の食堂からは「客が減る」との声が上がっています。これらの課題に対する対応方針をそれぞれ具体的にお答えください。
国民の懐より、国の懐が温かい
(問13)物価と賃金が上がれば、税収は自動的に増えます。昨年度は年収の壁を103万円から160万円に引き上げ、約1.2兆円の減税を行いましたが、それでも税収は84.2兆円と、当初見積りを6.4兆円も上回りました。過去5年間の上振れは平均で年6兆円に上ります。今年度も、4月から8月の税収は前年より13.5%、所得税に限れば18%増え、平均の賃上げ率5%を大きく上回っています。
政府は、物価高で増えた税収、いわば「インフレ増税」の分を、もっと国民に還元すべきではありませんか。国民の懐より、国の懐の方が温かいのです。改めて伺います。過去5年間の税収の上振れ額は、国税で平均いくら、地方税で平均いくらですか。地方税の上振れは、住民税の負担を軽くする余力があるかどうかに直結します。このような事実を前にしてもなお、所得税控除額の178万円までの上乗せ措置を、2年で終了するとおっしゃるのでしょうか。
(問14)財源について、総理は「心配には及ばない」と言われますが、国民が知りたいのはその中身です。政府は財源の一つとして、毎年3兆円規模の補正予算による物価高対策を見直すとしています。この見直しにより、今後の電気・ガス代等への支援がなくなる、あるいは縮小するのではないかと懸念されています。政府の見解をお示し下さい。また、2029年度から本格導入される就業者負担軽減支援金の規模は、毎年いくらですか。税率を8%に戻せば、年約4.3兆円以上の税収が戻ります。支援金がこれを下回れば、差し引きで実質増税と言われても仕方ありません。
国民民主党の対案
(問15)最後に、税の公平について伺います。1988年7月29日、消費税の創設を含む税制改革に臨んだ竹下登総理は、第113回国会の所信表明演説で、「税制は、国民の皆様が社会共通の費用を広く公平に分かち合うためのものである」と述べました。また、同年10月16日の税制改革懇談会では、「税制の不公平というものには二種類あります。情緒的不公平、そして理論的不公平」と語っています。これは税制改革を考える上で極めて示唆的な発言でした。税には計算上や制度上は公平に見えても、納税者が「自分は不当に扱われている」と感じれば、税への信頼は失われる。今こそ政府は、この歴史の警鐘に耳を傾けるべきです。年収300万円を境に、支援が届く人と届かない人が分かれる政府案は、中間層に、この情緒的不公平を生むものです。
本日、国民民主党はこの不公平を生まない「給付付き現役世代減税法案」を提出しました。所得税の基礎控除引上げを恒久化した上で、住民税の控除枠も所得制限なく178万円まで広げます。住民税の税率は一律10%ですから、年収にかかわらずすべての納税者の税負担を年5万円程度軽減できます。これは実質的な税額控除です。住民税のかからない方には、納めた社会保険料を上限に給付し、社会保険料の負担そのものを軽くします。低所得の方への給付と、中間層への減税をシームレスに組み合わせる私たちの案のほうが、政府案より給付付き税額控除本来の仕組みに近く、実務上も制度上も効率的だと考えています。先ほど述べた「2つの不公平」を解消し、2年後の中間層増税を防ぐことのできる私たちの提案を取り入れていただけませんか。総理の見解を伺います。
結び
私の師であり友人でもある財政学者の一人は「人間の尊厳は『働くことの誇り』と『働けないときの安心』から成り立っている」と言いました。不確実性が高まり、国家の自己保全が求められる時代のうねりの中で、国民には、より多くの勤労や自己責任が求められています。そんな時代だからこそ、尊厳ある生活の土台を整えることこそが、財政の役割であり、政治の使命です。そして、昼夜働いている現役中間層の「誇り」と、働けない方々の「安心」。その両方を守る制度にしなければなりません。なぜなら、子育てや介護、家族を養い、社会に貢献するための奮闘は、2年では終わらないからです。改めて、総理の誠実な答弁と、国民民主党からの提案に対する政府・与党の建設的な姿勢を期待して、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
以上
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