浅野哲青年局長(衆議院議員/茨城5区)は4日、国民民主党を代表し、衆議院本会議で議題となった令和7年度補正予算案に対する反対討論を行った。討論の全文は以下のとおり。
令和7年度予算案に対する反対討論
令和7年3月4日
国民民主党・無所属クラブ
浅野 哲
私は国民民主党・無所属クラブを代表し、政府提出の予算案ほか2案に対して、反対の立場で討論を行います。
国民民主党は結党以来、「家計第一」、「給料が上がる経済の実現」そして「手取りを増やす」というキャッチフレーズを掲げて、常に、国民生活の向上をめざす活動を展開してきました。先の総選挙においては、国民一人一人の可処分所得の引上げをめざす国民民主党の姿勢と、長期にわたって実質賃金が上がらず、物価高に苦しむ国民の皆様からのSOSが重なり、年収の壁の引き上げやガソリン暫定税率廃止にかつてない注目が集まりました。実際、昨年の総選挙前後で、「103万円の壁」「年収の壁」というキーワードでの検索頻度は、実に10倍以上に跳ね上がっています。この国会に課せられた責任は、この国民から届くSOSにしっかりと応えることのできる予算を策定することです。
そもそも、私たち国民民主党が、なぜ「106万円の壁」や「130万円の壁」ではなく、「103万円の壁」の引き上げを先に行おうとしたのか。それは、103万円の壁を動かすことで、人手不足が深刻化するいまの時代に増加する就業調整の問題を改善しようとするだけではありません。この間まじめに働き、日本を支えてきたすべての労働者の手取りを増やし、日本を動かしている最大のエンジン、すなわち個人消費を再び活性化させるためであります。
私たちが提案している178万円までの引き上げが実現すれば、年収300万円で年間11.3万円、年収500万円で年間13.2万円の減税効果が現れますが、与党案だと年収300万円で年5,000円、年収500万円で年1万円の減税効果しかありません。実に10倍以上の効果を発揮することができます。さらに、これまで就業調整を行ってきた方々が、さらに労働参加できるようになり、労働対価としての収入も同時に増やすことができるのです。
政府・与党には限られた国家財政の中で、堅実な財政運営を行う責務があります。しかしその一方で、30年以上の長期にわたって低成長が続いてきた我が国の経済と国民生活を、もう一度成長軌道に導くためには、「財源の範囲で、来年度何ができるか」ではなく、「国民生活と将来世代のために、いま何をすべきか」という姿勢で決断をすることが、いまの政権を担う者の責任ではないでしょうか。
さて、国民民主党は昨日、立憲民主党とともに、いわゆるガソリン暫定税率の廃止法案を提出いたしました。そして、日本維新の会も令和8年度から暫定税率を廃止する法案を提出したと伺っています。現在のガソリン高は、物流や生産コスト上昇の要因となっており、全国各地の地場産業や中小企業経営者を苦しめています。そのため、この間の予算委員会においても、ガソリン暫定税率廃止の必要性について、我々国民民主党はもちろんのこと、自民党、立憲民主党、日本維新の会、公明党、れいわ新選組などほとんどの政党が肯定しています。また何度でも申し上げますが、昨年12月には自民党、公明党、国民民主党の幹事長間でも廃止に合意しています。
―にも拘わらず、令和7年度予算案や税制改正内容には検討規定しか盛り込まれておらず、三党協議や予算委員会の中でも、石破総理や与党から返ってくるのは「恒久的財源を―」という言葉ばかりでした。ここでひとつ、申し上げたいのは、いわゆるガソリン暫定税率は1974年当初、期間限定という事で始められ、延長が重ねられてきました。現在は「当分の間税率」という名称がついています。つまり、そもそも「恒久財源ではない」のです。これは歴史上、決して変える事のできない厳然たる事実です。あくまでも「暫定的」「当分の間」という前提・名称の税目であり、これを廃止する代わりに「恒久的財源を―」というのは、根本的に成り立たない。それは、政府の、与党の身勝手な理屈です。改めて申し上げますが、三党の幹事長合意事項は「いわゆる「ガソリンの暫定税率」は、廃止する。」です。この事から、国民民主党としては、令和7年度予算案および税制改正内容において、この三党の幹事長合意が履行されているとは考えておりません。
なお、立憲民主党から提出された修正案については、先ほど申し上げた103万円の壁の引き上げについて含まれていない事等の理由から、国民民主党の要求を満たすものとはなっておらず、賛成することができません。
以降、政府予算案の内容について、個別に問題点を指摘します。
まず、高額療養費制度の見直しについては、多くの野党が反対を表明した理由として、制度の見直しプロセスに、決定的な瑕疵があったと言わざるを得ません。国民民主党は制度の持続可能性を高めるために、より精緻な応能負担を推進することや、現役世代の保険料負担軽減を軽減する事自体は評価をしています。しかし、今回の問題は、制度見直しの影響を最も受ける患者をはじめとする関係者・団体の意見を事前に聴取しなかった点です。また、多数回該当時の負担額を据え置いたことは評価できますが、高額療養費の基準額引き上げについては、まだ説明が十分とは思えません。この後、厚生労働委員会が動き始めますが、政府には、患者やご家族が心配している「現在の生活が維持できなくなるのではないか」「自分のせいで家族や子供に辛い思いをさせてしまうのではないか」などの不安に寄り添った説明を求めます。
また、教員の処遇改善について、政府は令和7年度から12年度までの間に教職調整額を4%から10%に段階的に引き上げる方針ですが、初年度の令和7年度に+1%だけというのは、極めて小幅であると言わざるを得ません。また、今後についても教員の働き方改革の進捗を検証しながら、追加的な措置を行っていくという方針ですが、これは順番が逆です。まず過労死ラインを超える長時間労働が続いている現場の負担を軽減するため、教員定数を早期に見直すべきです。教職員の皆さんが求めているのは、「お金」よりも「仲間」です。そして、政府・地方自治体の理解と協力です。石破総理には、国家財政ではなく、この国を支えている現場と、現場から生み出されていく未来の日本の姿に心を向けていただきたい。
科学技術振興費についても同様に、本予算案では前年度比0.9%増の1兆4,221億円が計上されていますが、昨今の物価高の中では実質マイナスになることは明々白々です。国際経営開発研究所(IMD)の発表では、2024年の日本の国際競争力ランキングは調査対象となった67ヶ国中38位と、前年の35位からさらに順位を落とし過去最低順位となりました。これを深刻な事態と言わずに何というべきでしょうか。かつて日本は1位を連続で獲得していた時期もありますが、この30年間、日本は順位を落とし続けているにも関わらず、科学技術予算は横ばいのままです。
なぜ政府は、ここまで科学技術分野を軽視するのでしょうか。最近の国際情勢を鑑みれば、防衛分野などの安全保障分野に予算を重点配分することに理解はできます。であれば、なおさら科学技術予算を重視しなければならないはずです。科学技術力は国家の経済成長はもとより、安全保障能力強化の原動力です。この点からも、政府の予算配分の妥当性に疑問を持たざるを得ません。
最後に、国民民主党として捉えている、今後の重要課題について申し上げます。
1つ目は、就職氷河期世代への支援です。今年は2025年。団塊世代が75歳以上に達し、国民の4人に1人が後期高齢者となるタイミングがやってきました。同時に、団塊ジュニア世代の平均年齢も50歳に到達し、今後中高年のビジネスケアラーが急速に増加していきます。そして、この団塊ジュニア世代の中心にいるのが、いわゆる就職氷河期世代です。
就職氷河期世代は、激しい就職競争の中、不安定な雇用や低賃金、キャリアアップ機会との断絶という厳しい時代の中を踏ん張ってきた世代でもあります。当事者の中には、老後資金への不安や家族の介護問題を抱える人達も増えていますが、政府の中には、就職氷河期世代に主眼を置いた施策はありません。そこで、私たち国民民主党は、国による就職氷河期世代に関する実態調査や厚生年金の過去遡及納付、国主導によるソーシャルファームの全国展開などを含む「就職氷河期世代政策に関する提言」を昨年公表しました。特に、福岡厚生労働大臣には、大臣と同年代である就職氷河期世代の国民が抱える様々な課題に寄り添っていただきたいと思います。我々国民民主党の提言内容も含め、今後さらなる具体的な支援策についても議論を深めてまいりましょう。
2点目は、暗号資産に関する規制緩和や課税方法の見直し、取引環境の充実です。現在、世界の暗号資産関連市場は急速に成長していますが、日本国内では2021年に行われた取引規制の強化以降、国内の取引量は低空飛行を続けています。一方で、日本には人口の16%にあたる約2,000万人のユーザーがおり、これは、米国や欧州と同程度の普及率です。暗号資産は、新興国を中心に13億人以上とも言われている銀行口座を持たないアンバンクト層の決済手段や、新興企業の資金調達手段、為替影響の回避や国際送金の効率化・低廉化など、経済や産業を大きく発展させるインフラとなり得る存在です。石破政権には、暗号資産に係る課税方法の見直し、レバレッジ規制の緩和(上限2倍から10倍へ)、暗号資産同士の交換時における非課税化、損失繰越控除(3年間)の導入、そして暗号資産ETF導入にむけた検討を加速していただくよう強く求めます。
以上、本予算案に対する国民民主党としての意見を申し述べました。私たち国民民主党は、「税金を使う側」ではなく「税金を納める側」の立場に立ち、「前例」よりも「可能性」を重んじ、「対決より解決」の姿勢で、引き続きこの国会における議論に臨んでいく事をお誓い申し上げ、私の討論と致します。
ご清聴、ありがとうございました。
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