福田徹政務調査副会長(衆議院議員/愛知16区)は20日、国民民主党を代表し、衆議院本会議で議題となった年金改革法案に対する質疑を行った。質疑の全文は以下の通り。

 国民民主党 福田徹です。
 質疑に先立ち、今月14日航空自衛隊T4練習機が愛知県犬山市入鹿池に墜落した事故に触れます。まず何よりも2人の隊員の一刻も早い発見を祈ります。入鹿池は日本有数の農業ため池です。米作りに必要な農業用水の安全保証をお願いいたします。また、自衛隊機を巡っては2018年以降5件の事故が発生しています。周辺住民のためにも、そして自身への危険を顧みず、国民のために尽くさんとする自衛隊員のためにも、事故原因の究明と再発防止の徹底を強く求めます。

 質疑に入らせていただきます。
 私は救命救急センターの救急医として働いてきました。現役世代の負担を抑えながら、世界一の日本の医療を守る。救える命を必ず救う。その思いで政治の舞台に参りました。命のために働いてきた自分が、今この壇上で年金について質疑をする。この法案について指導をお願いした税理士の友人からは「お前の仕事も変わったな」と笑われました。
 救急医は「命の危機」を救う仕事です。一方で、年金をはじめ私たち政治家がここで議論する事柄は、人間の毎日の生活です。「命の危機」の前にある「命の日常」を守る仕事です。私は彼に対して堂々と、年金について質疑をする自分は、今も人の命を守っていると言いたいと思います。「命の日常を守る」という自覚とともに、真剣で前向きな議論をさせていただきたいと思います。

 本日の質疑は、一つ、今回の法改正の目的、二つ、議論の前提の確認、三つ、目的を達成するために行う施策の内容、四つ、その施策が合理的であると考える根拠、の順でお尋ねさせていただきます。

 総理にお尋ねします。今回の法改正の目的は何でしょうか?「年金制度の持続性の強化なのか?」「現在の受給者の年金額確保」なのか、「将来の受給者の年金額確保」なのか。もしくは「全て」なのか。目的によって行うべき施策は違います。
 私は、最大の目的は、「将来の受給者の年金額確保」とする必要があると考えます。特に今50代に差しかかった就職氷河期世代の方々、そしてそれ以降の方々が、将来「生活ができる」「生きていくことができる」金額の年金を受け取れるようにすることだと考えます。
 今のままでは、年金で生活できない高齢者が沢山生まれることは間違いないと予測されています。2024年財政検証では就職氷河期世代が71歳~87歳となる2057年には、誰もが受け取る基礎年金は3割減ると見込まれています。現在、月13.4万円ある基礎年金が月10.7万円となります。しかもこれは夫婦2人の年金を合わせた金額です。単身ではもっと少なくなります。これではとても生活できません。
 総理にお尋ねします。この2057年の年金額についてどうお考えでしょうか?今回の法案で2057年の年金額をいくらにすることを目標にされますでしょうか?経済シナリオによって変化することは理解しておりますが、大まかな金額が分かるだけで就職氷河期世代やそれ以降の世代は、それを前提に資産形成等準備ができますので、どうかお答えいただけたらと思います。

 私は、今回の2024年財政検証で最も大きな懸念を感じている点は、試算の前提です。将来推計は、2070年の合計特殊出生率1.36を前提に試算されています。近年合計特殊出生率は下がり続け、2024年は1.15と予測されています。2070年に1.36は現実的な数字でしょうか?これより低ければ将来の年金額はもっと低くなります。
 総理大臣にお尋ねします。この前提はあまりに楽観的すぎるのではないでしょうか?どのような想定で1.36となったのでしょうか?1.36よりも低くなれば、将来の所得代替率は見込みより大きく下がる。このことについてどう考えますでしょうか?

 次に、総理が目標とする年金額を達成するために行う施策についてお聞きします。
 本案では、・被用者保険の適用拡大 ・在職老齢年金制度の見直し ・標準報酬月額の上限の見直しが盛り込まれています。どれも、「頑張れる人はもっと頑張って老後に備えてください」という施策です。もちろん必要な施策です。しかし、最も重要な施策が抜け落ちています。全ての人が受け取る基礎年金を「生きていける年金」として保障するという施策です。これは就職氷河期世代対策でも同じです。リスキリング、就労支援、資産形成支援。もちろん大切な施策です。でも50代に差し掛かった就職氷河期世代から届く生の声は「何をいまさら」「もう遅い」「増やす資産なんてない」そんな声です。これは厚生労働省のデータでも示されています。氷河期世代では金融資産500万円以下が半分近くと他の世代と比べて少ないことが示されています。近年は賃上げが実現していますが、2019年から2024年の賃金上昇率は他の世代と比較して就職氷河期世代で小さくなっています。これは個人の努力不足ではありません。大学卒業者の就職率は約69.7%と他の世代に比べて10ポイント以上低い。1990年に2.3%であった完全失業率は2002年には5.4%。あらゆるデータが、個人の努力不足ではなく、政治や社会に問題があったと示しています。就職の時期は厳しい。その後はずっとデフレ。賃金が上がっても自分達だけ上がらない。この世代にすべきことはリスキリングだけではありません。必要なのは「生きていける年金」を保障することです。
 私たち医師が治療する細菌性肺炎の根本的治療は細菌を死滅させる抗生剤です。決して咳止めや解熱剤ではありません。今回の法案は、「基礎年金を増やす」という抗生剤なしで、咳止めと解熱剤だけで肺炎を治療するようなものです。抗生剤なしでは患者の命を救えません。抗生剤投与が遅れれば救えるはずの命を救えません。
 総理にご提案させていただきます。就職氷河期世代の「命の日常」を守るために、「基礎年金を増やす」という抗生剤を投与しませんか?お考えをお聞かせください。

 当初の改正案には「現在の厚生年金受給者の年金額を一定程度減らし、将来の基礎年金を増やす」施策が入っていたと報道されています。私は本案からその施策が外れていることを非難する気持ちはありません。政府や与党という集団の中で様々な論点が丁寧に議論され、その結果、何かの意思決定がなされることは正しい姿です。そして今はここ国会という次の集団で丁寧な議論をさせていただきたいと思います。そしてよりよい議論を行うために大切なことは、政府や与党の中でどのような議論を経て意思決定がなされたか、ということです。
 総理にお尋ねします。当初検討されていたという「マクロ経済スライドの早期終了による基礎年金の底上げ」が本案から外れるにいたった議論の内容について教えてください。「政府として削除すべきでないと説得されましたでしょうか?していないのであれば、なぜしなかったのでしょうか?

 私は、なぜこの施策が妥当なのか、国民に向けてオープンに議論し、丁寧に説明すれば受け入れられる可能性があると考えます。そして就職氷河期世代やその後の世代のために「必要な」施策だと考えます。
 「マクロ経済スライドの早期終了による基礎年金の底上げ」では2040年までの厚生年金受給者にとっては年金減額がある施策です。どのようなお気持ちになるか十分に理解できます。そしてこのような施策を提案しなければいけないことに心からお詫びを申し上げます。
 この施策の合理性を理解するためには、2004年年金制度改正まで遡る必要があります。2004年の時点で、経済状況に合わせて足元の年金給付を抑えて100年先まで安心の年金制度とする予定でした。ただその後のデフレの程度ほどに基礎年金の給付を下げることができず、2004年時点で59.3%であった所得代替率を、2023年に50.2%まで下げる予定であったところ、実際は2024年に61.2%と逆に上がってしまっています。つまり、今の年金は100年安心のために作った2004年の時点での計画より多く支払っているということになります。それでは将来の年金が減るのは当然です。
 総理にお尋ねします。2004年時点での見込みと比較して、現在の所得代替率が高く、将来の所得代替率が低くなることについてどうお考えでしょうか?この問題を解決するためにすべきことは何とお考えでしょうか?

 私は政策を間違えることを悪いと思いません。政策の運用がうまくいかないことを悪いこととも思いません。悪いことは、一度始めた政策を、検証せず、見直さず、間違ったままでいることです。優れた政治とは、100%正しい政策を作ることではなく、根拠に基づいた政策を作り、確実に検証し、よりよい政策に修正できる政治だと思います。
 総理にご提案します。本案を見直し、よりよいものにしませんか?今、当初の計画より払いすぎている年金を見直し、将来の年金を守りませんか?そして、受け取れる年金が減ってしまう一部の受給者を、心から大切に思いながら、思いに共感しながら、場合によっては別の支援を検討しながら、合意を得る努力をしませんか?ご意見をお聞かせください。
 今回の法案を、国民のために本当に価値のあるものとして実現するためには、多くの政治家、多くの国民で合意を得る必要があります。
 今は政党同士で戦う時ではありません。私たち全員が、私たちが知る困っている人1人1人の顔を思い浮かべながら、国民のために力を合わせましょう。
 救急医療チームは一つの命を救うために一つになります。私たち国民民主党は「対決よりも解決」。この本会議場の全ての議員で「命の日常」を守るために一つになりましょう。
 ご清聴ありがとうございました。

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