田中けん政調副会長(衆議院議員/静岡4区)は9日、衆議院本会議において、政府の財政演説に対する質問を行った。全文は以下の通り。

国務大臣の演説に対する質疑

衆議院議員 田中 健

国民民主党の田中健です。
補正予算についての加藤大臣の財政演説に対して、国民民主党を代表して質問をさせていただきます。

〇103万の壁
私たち国民民主党は103万の壁対策を政府に求め、総理は所信表明演説で引き上げを明言されました。6日の3党協議の中では、年収103万円の壁の見直しに関連し、19歳〜23歳の子どもを扶養する親に適用されていた「特定扶養控除」の年収要件を103万円から引き上げることで合意がありました。まずは大きな一歩です。
一方、政府・与党が、控除額の引き上げについては、実施時期について2026年1月からの適用開始を軸に検討しているとの報道が流れました。これは事実でしょうか。
所得に対する課税は、1月1日からの1年間分に対して行われるので、103万円の壁の引き上げによる所得税の減税は、準備期間も念頭に早ければ26年1月からの適用となると言っていますが、そもそも制度的にも技術的にも来年から実施することは不可能ということでしょうか。来年分からの所得税減税は無理なので、再来年分からというのは、やる気がないだけではないですか。しっかりとした説明を求めます。
改めて、国民民主党は、103万円の壁の引き上げについて来年2025年分からの適用実施を求めます。岸田政権の定額減税と異なり基礎控除を引き上げるだけなので処理は極めてシンプルです。総理、来年から行うと約束していただけませんでしょうか。

〇ガソリン減税
ガソリン減税について伺います。ガソリン減税を含めた自動車関連税制の改正についても1年先送りする方針を決めたという報道がありました。
自動車関係諸税は一つでなく、複雑であり、すぐには決められないものかもしれませんが、ガソリンの暫定税率はそもそも特定財源だったものが一般財源化されています。上乗せをしてきた分を恒久財源と思わせて徴収する国のやり方に国民からも疑問の声があがっています。
今回もガソリン価格の高騰を抑えるための補助金に補正予算で約1兆円が計上されました。9月までを見越した予算とのことですが、いつまで補助金を続けるつもりですか?もういい加減に、税で徴収して補助金で補填するのはやめにしませんか。自動車関係諸税の見直しを進め、ガソリン税の暫定税率の来年度廃止を求めます。総理の見解を伺います。

〇ブラケットクリープ対策
政府は、今年度2024年度の税収が73.4兆円に達し、5年連続過去最高になるとの見通しを公表しました。当初予算の税収見積もり69.6兆円より3.8兆円も上振れる見通しです。
税収の上振れは、今年度だけの話ではありません。2021年度+9.6兆円、2022年度+5.9兆円、2023年度+2.6兆円、2024年度+3.8兆円と、平均、毎年4〜5兆円程度の税収の上振れを出しています。
これは、インフレと賃上げによる「ブラケットクリープ現象」が起きていることを表していると言えます。デフレからインフレに経済のステージが変わったことによって、GDPの伸びに対する税収の伸びの感応度が大きくなっており、結果的に、税金を予定より「取り過ぎている」状況が生じていると思いますが、総理の見解を伺います。またブラケットクリープ対策を講じる方針があるかどうかも併せて伺います。
国民民主党の提案する所得税の基礎控除の引き上げは、こうした税の取り過ぎを是正し、手取りを増やし、経済、とりわけ消費を活性化することで、持続的賃上げを確実なものにしようとする経済政策です。
今のままでは、いくら民間が努力して賃上げしても、税と保険料が増えて、結局、手取りは増えない状況が続きます。好循環の鎖が切れている状況です。103万円を引き上げると減収になるとの情報ばかりメディアにあふれていますが、そもそも予定より税金を取り過ぎていて、国に過度に集まり過ぎた税金をお返しすべきとの発想が欠けています。

〇歳入歳出の見直し
また、予算の使い残しも毎年多額にのぼっています。2022年度の不用額は11.3兆円、2023年度の不用額は6.9兆円、そして今年度も補正ですでに1.6兆円、既定経費の減額をすることになっています。こうした多額の不用額は、予算積算をより厳格にすべきことを示唆しているのではないでしょうか。
会計検査院からも国の決算に対する報告書が公表されました。2022年度補正予算総額、約32兆円のうち支出が確認できた138事業の約19兆円の予算の46%が年度内に消化されず、うち34事業は約1兆5千億の予算全額が翌年に繰り越され、最終的に約6000億は使われなかったとの指摘です。
減収になると大騒ぎするよりも、歳出、歳入両面にわたった緻密な見直しが必要ではないでしょうか、加藤大臣の見解を伺います。
また、基礎控除を178万円にあげた場合、国地方合わせて7~8兆円が税収減になることが政府から示され、新聞テレビマスコミ国民皆さんから様々な声があがりました。6日この減収額の詳細が示されましたが、基礎控除1万円当たりの減収見込額に、上乗せ分の75万を掛け合わせただけのもので、極めて粗い試算であることがわかりました。私たちは、正確な数字でしっかりと議論をしていかなくてはならないと思っています。財源を出せ出せというならば、減収額についても根拠を示し、緻密に試算をした額を出してもらわないと話になりません。加藤大臣の見解を伺います。103万の壁対策も、ガソリン税減税も再来年以降、また減収額の数字も明確に示さない、減収額の但し書きには、「この試算は粗い試算であり相当の幅をもってみる必要があること留意が必要」と書く始末。このような不誠実な対応が続くなら補正予算について賛成できるかどうかわかりません。
「税金を集めて使う側」に立った政治を行うのか、「税金を払う側」に立った政治を行うのか、それぞれの政治家や政党の立場が問われています。国民民主党は納税者の立場に立った政策を進めていきます。

〇所得税増税
防衛力強化のため、政府は令和5年度税制改正で法人、所得、たばこの3税の税率引き上げなどで財源を確保する方針を決定しています。令和9年度には3税の増税で1兆円強を賄う計画を、来年以降段階的に実施していくとのことです。所得税については、103万円の壁を引き上げる一方で、増税をするのでは、結局負担が増える可能性も否定できません。手取りを増やすとして減税を訴える私たちの考えと逆行するものであり、消費にも水を差すものと考えます。所得税増税をどう考えているのか総理の見解を伺います。

〇再エネ賦課金
6日に国民民主党は、再エネ賦課金に関する法案を提出しました。政府は電気量の高騰が続いていることから補正予算で負担軽減策として補助金を計上しましたが、私たちは再エネ賦課金の一時停止を求めています。賦課金は太陽光や風力発電など再エネ普及のため、全家庭が毎月の電気代の一部として支払っています。制度導入以来、1キロワット時あたり0.22円だったものが、今年は3.49円と上昇傾向にあり、このまま上がり続ければ家計への負担は大きくなるばかりです。月に400キロワット時使用する標準的な家庭の場合、賦課金は月額1396円。前年に比べ836円もの負担増となっています。
国民の負担感を和らげるために電気代補助金の終了と復活を繰り返している今の現状をどう考えているのか。上がり続ける再エネ賦課金の在り方、再エネ電気の供給促進に要する費用の在り方を総合的に検討するときに来ているのではないかと思いますが、総理の見解を伺います。

〇WEB3、暗号資産
先日我が党浅野議員が代表質問で取り上げた、暗号資産の税制改正に関する石破総理の答弁には落胆の声が広がっています。20%の申告分離課税や損失繰越控除の適用もゼロ回答、暗号資産のETFにまで消極的でした。ビットコイン大国を目指す米国とどんどん差がついていくのは明らかです。検討ばかりで、Web3先進国にするとの国家戦略はどこに行ってしまったのでしょうか。暗号資産については、金融庁が公表した2024事務年度金融行政方針の中に「国内暗号資産口座数が1000万口座を超える中、暗号資産取引市場が健全に発展するためには、生活の利便性や我が国の経済成長に資するものであるとの理解や信頼が国民から広く得られることが不可欠であると指摘されており、制度のあり方等について改めて点検する」と記載があります。この分野を自民党でけん引してきた平大臣に、WEb3先進国に向けての見解、暗号資産の取引市場・税制の在り方についての所見を伺います。

〇ネットの闇
インターネットや暗号化技術を悪用して、闇バイトや違法オンラインカジノ、中華圏の違法プラットフォーム事業者による白タク、民泊業者などが増えており、「ネットの闇」問題が大きく広がりをみせています。政府の所掌が縦割りで迅速に動けなかったり、海外事業者への対応がおざなりであるなど、現状は大きな問題があると言わざるを得ません。こうしたネットの闇問題に対して、より一元的かつ迅速な対応をすべきと考えますが、総理の考えを伺います。
また、警察庁が「仮装身分捜査」の導入を検討しているとのことです。治安が悪くなっているとの国民の不安に応えるためには、新たな捜査手法を活用して、事件の抑止や解決につなげてもらいたいと考えますが、どのような課題があり、また効果をねらっているのか導入に向けての考えを伺います。

〇薬価中間年改定廃止 
6日、国民民主党は中間年薬価改定に関する緊急申し入れを総理に行いました。診療報酬改定がない年の薬価改定いわゆる中間年薬価改定は、2016年12月に当時の4大臣によって決定された「薬価の抜本改革に向けた基本方針」4大臣合意に基づき実施されていますが、この制度は法的な位置づけがありません。毎年薬価改定と引き下げが続く今の現状が続けば、薬の安定供給体制や新薬創出環境が崩壊してしまいます。当時の前提や環境の変化を踏まえ、中間年改定を廃止することを求めます。また公定価格が決まっていることから価格転嫁が実質不可能なっている中、物価高騰により上昇したコストを適切に転嫁し、安定供給基盤・創薬基盤の再構築をすべきと考えますが、総理の見解を伺います。ドラッグラグ・ドラッグロスにより海外では流通している薬にアクセスできない、これも生存権の問題ではないでしょうか。命と健康を守る政治を進めようではありませんか。

○最後に
10月末の総選挙では、国民民主党は国民から幅広いご支持をいただきました。とはいえ、わずか28人であります。初心忘れることなく、おごることなく、国民の声に真摯に耳を傾け、「つくろう、新しい答え。」、今ここにない答えを皆さんと共に創っていく決意です。
総理始め各大臣の真摯な答弁を求め、質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

The post 【衆本会議】田中けん議員が政府の財政演説に対する質疑 first appeared on 新・国民民主党 – つくろう、新しい答え。.