憲法審査会発言要旨(2024年5月23日)
国民民主党・無所属クラブ 玉木雄一郎

 憲法審査会も今国会、残り4回となった。「起草委員会」を速やかに設置し、条文案づくりに着手することを提案する。そして、本審査会において条文ベースでの議論を受け入れていただけないのであれば、せめて、「要綱形式」で議論することを提案する。

 「緊急事態における国会機能維持を可能とする憲法改正」については、もはや論点は出尽くしており、これ以上発言するすることもあまりないが、先週、立憲民主党の本庄幹事から繰延投票で対応できるとの意見が出たので、今日は繰延投票について何点か質問するので、答えていただきたい。

 まず、公職選挙法57条に規定する繰延投票とは「天災その他避けることのできない事故により、投票を行うことができない」場合に、選挙管理委員会は、更に選挙期日(投票日)を定めて投票を行わせなければならない、と定められている。現行の公職選挙法の下で行われた国政選挙の繰延投票は、1965年と1974年の参議院選挙のときの2回だけで、いずれも1週間の延期であり、長期にわたり、広範囲に投票期日が繰り延べられた例はない。

 立憲民主党は、選挙ができるようになるまで投票期日を何度でも延期すれば問題ないと主張しているが疑問があるので、3問質問したい。答えてほしい。

 ①繰延投票とは、選挙期日に投票所で投票ができないために、投票ができると思われる別の日を各地の選挙管理委員会が決めて行われる投票である。そもそも今、私たちが議論しているのは、大規模災害等によって70日を超えて長期にわたって広範に選挙ができないケースであって、台風や集中豪雨のように短期で終わる事象ではない。長期かつ広範に選挙ができない事態に陥った時に、その時点で、選挙が可能と思われる別の選挙期日を正しく決められるのか。そもそも、繰延投票で何日間までなら延期できると考えるのか。答えを求めたい。

 ②繰延投票に係るこれまでの政府答弁は、最初の選挙期日さえ解散から40日以内に設定されていれば、繰延べられた投票期日は40日を過ぎてもいいとの立場であるが、逆に言えば、解散から40日以内に公示されていなければ憲法違反になる可能性がある。つまり、大規模災害が発生しても形式上は選挙はスタートさせなくてはならない。これが「期日前投票」で大きな問題を生じることを指摘したい。2003年に期日前投票が導入され、投票は選挙期日つまり投票日だけでなく、公示又は告示の翌日から投票できる。だから、いくら投票期日を延期しても、期日前投票はできるし、選挙運動も可能だ。投票ができないから選挙期日を延期しているのに、期日前投票ができるとするのは矛盾。また、選挙困難事態に選挙活動を認めることも矛盾。仮に違反行為があっても、災害で職員も被災していれば警告もできない。それでも繰延投票で対応できると考えるのか。答えてほしい。

 ③最後に、仮に法律で国政選挙の選挙期日を延期できたとしても、その間の議員任期を延期することはできない。これは、2011年に野田内閣で閣議決定されている。仮に、70日を超える長期にわたって選挙期日を延期する場合、その間、国会議員が不在になるが、長期にわたって参議院の緊急集会で対応するには憲法上限界があることなども申し上げている。もし「スーパー緊急集会」を認めるなら憲法改正が必要だということも何度も申し上げている。そして、こうした長期にわたる議員不在の状況を生み出す判断を、選挙管理委員会に委ねて良いのかという問題もある。あわせて答えていただきたい。

 やはり、「長期にわたって」「選挙の一体性が害されるほど広範に」選挙が困難な事態、すなわち、選挙困難事態が発生した時には、国会機能を適切に維持するために、選挙期日の延期とその間の議員任期の特例延長に関する規定を創設することが必要だと考える。

 最後に残る反論は、選挙困難事態なんて発生しない、というものになるだろうが、前回も述べたとおり、危機に備えるかどうかを決めるのは私たちしかいない。国民からの付託を受けた私たち国会議員が決めなければ答えは出ないのである。しかも、立憲民主党所属の多くの議員の皆さんも、東日本大震災の発災の際、選挙ができずに、特例法を制定して204日もの長期にわたり投票期日を延期し、その間地方自治体議員の任期を延長するといった経験をしたはずだ。

 逆に、繰延投票で対応可能なら、なぜ、あの時、繰延投票で対応しなかったのか。やはり、繰延投票では問題があるとして、選挙期日の延期と議員任期の特例法を作ったのではないのか。

 立憲民主党が政権与党を目指すなら、危機に備える意思と能力を備えていることを示した方がいいのではないか。このことを最後に申し上げて発言を終える。

<参考>国民民主党「憲法改正に向けた論点整理」(2020年12月)

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