田村まみ国民運動局長(参議院議員/全国比例)は4日、国民民主党を代表し、参議院本会議で議題となった年金法改正案に対する質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。
令和7年6月4日
国民民主党・新緑風会
田村 まみ
年金法改正案 本会議質問
国民民主党・新緑風会の田村まみです。ただいま議題となりました、法律案に対し、会派を代表して質問いたします。
今回の年金制度改正の議論では、厚生年金の積立金を活用した基礎年金の底上げ、マクロ経済スライドの調整期間の一致による基礎年金の底上げ措置に注目が集まっていますが、働き方に中立的な年金制度の構築に向けた様々な施策や重要な論点が置き去りにされたのが政府の提出法案です。
将来の年金受給世代の給付水準を確保するには、あらゆる側面からの見直し議論を行う必要があるため、与野党を超えた検討・協議の場が必要です。これまで衆議院でも指摘がありましたが、総理、今後の年金制度をはじめとする社会保障制度の議論の在り方をどのようにお考えでしょうか。
基礎年金の底上げ措置、マクロ経済スライドの調整終了の実施時期について伺います。昨年行われた財政検証では、経済が順調に推移しない限り基礎年金の給付水準が3割減少するという結果が出ています。就職氷河期世代をはじめ、適用拡大を10年後に先送りする事で、厚生年金に比べ基礎年金の割合が高く給付される人たち程、大きな影響を受けます。
政府はマクロ経済スライドの調整について、「次の!」財政検証で見直すと繰り返し衆議院で答弁していますが、現在の基礎年金受給額は、満額でも69,308円、生活保護受給者の過半数が65歳以上の高齢者となっていることを問題とは捉えていないのでしょうか。経済動向をみて検討するなどと悠長に構えているのではなく、現在と将来の受給水準の課題を直視しているのであれば、今回の改正でマクロ経済スライドの調整の早期終了を決断すべきと考えますが総理の見解を求めます。
次に、今回の政府提出法案で唯一の年金給付の底上げ措置であると言っても過言ではない、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大について伺います。
適用拡大の企業規模要件は、2012年改正から2024年にかけて、順次その規模要件が引き下げられてきました。
今回の改正では、現行の従業員50人超の要件を段階的に撤廃することとしておりますが、完全撤廃は2035年10月、今から10年後の施行となっています。ここから10年後、氷河期世代の私は59歳。適用拡大を始めて23年の期間をかけてしまう決断をすることは、総理、誰のためでしょうか。氷河期世代より後の世代のためですか。事業主負担を心配する事業者のためですか。10年の経過で事業者は負担の工面が立つという見通しが総理にはあるのでしょうか。お答えください。
2024年に、50人超の企業に対して適用拡大が図られた際、労働者への説明も準備もしていない事業者が散見され、その声に押されるように慌てて厚労省は年収の壁・支援強化パッケージを用意しました。
施行まで4年の準備期間があっても結局直前の対応となったのですから、長過ぎる準備期間よりも、実施のための支援を充実させることの方が重要ではないでしょうか。年金制度改正のベースとなる財政検証が少なくとも5年ごとに行われることを踏まえれば、企業規模要件の完全撤廃は、5年後に完了とすべきと提案します。総理の決断を求めます。
2024年6月、女性の職業生活における活躍推進プロジェクトチーム 中間取りまとめでは、女性が出産後にパートタイムとして復職した際に、「年収の壁」を超えて働く場合、扶養対象となる第3号被保険者の範囲内で働く場合と比べて、生涯可処分所得が1,200万円から2,200万円増加するとの試算が示されました。
企業規模要件の完全撤廃が10年後まで先送りされることによって、このような働く女性の老後資産形成を妨げ、特に高齢期に単身の場合の生活に大きく影響してくることが考えられます。
こうした具体的な数字、影響を踏まえた上で、早期に企業規模要件の撤廃を完了する必要性について、総理の見解を伺います。
また、被用者保険の適用拡大については、厚生年金だけでなく、健康保険にも影響を及ぼすものですが、健康保険を取り扱う社会保障審議会医療保険部会と年金部会との連携は限定的でした。
厚生労働大臣、本来は、両部会が密に連携して議論すべきだったのではないですか。
次に、今回の適用拡大では、企業規模要件の撤廃や、「106万円の壁」と言われる賃金要件の撤廃が盛り込まれていますが、週の所定労働時間20時間以上という労働時間要件は手つかずのままです。総理、「106万円の壁」月8.8万円の要件がなくなれば就労調整がなくなると本気で考えているのですか。
雇用保険においては、現在、週20時間以上となっている労働時間要件を、令和10年10月から週10時間以上に変更することが決まっています。社会保険についても雇用保険の要件に合わせて週10時間以上とすることは、これまで複雑で難解な労働者を取り巻く制度を分かりやすくする観点からも望ましいです。年金部会の議事録では、週10時間以上とすべきとの意見の方が多数派で慎重意見はごく少数でした。労働時間要件を週10時間以上とすることは、政府の掲げる勤労者皆保険の実現にも沿うものであり、働き方に中立的な制度の構築に資するものと考えますが、総理の見解を伺います。
次に、厚生年金の標準報酬月額の上限引上げについて伺います。
厚生年金の保険料額は、毎月の給与等に応じた基準額である標準報酬月額に保険料率を掛けて算定されます。その上限となる標準報酬月額は65万円とされているため、給与等がそれ以上でも、厚生年金の保険料額は、変わりません。一方、同じ被用者保険である健康保険の標準報酬月額は、厚生年金の32等級に加えて、下に3等級、上に15等級を加えた50等級の区分とされており、上限の標準報酬月額は139万円とされています。
今回の改正では、厚生年金の標準報酬月額を令和9年から令和11年に掛けて3段階引き上げ、負担能力に応じた負担を求めることとしています。せっかく賃金が上がっても手取りが減る、所得再配分を効かせるならばもはや社会保障ではなく税ではないかとの疑問の声が上がっています。総理、今後は年金についてもこれまで以上に所得再配分機能を効かせていくお考えでしょうか。
今回の標準報酬月額の上限を引き上げる改正では、全被保険者の平均標準報酬月額を基準とする現行のルールから、上限等級の被保険者数の全体に占める割合を基準とすることが、盛り込まれています。
これでは、上限を引き上げやすくして現役世代の負担増だけを議論していると受け止められても仕方ありません。公的年金控除額等の見直しなども同時に検討すべきです。
そもそも、厚生年金の標準報酬月額の上限については、上限を高くし過ぎることで将来の給付額の差が大きくならないようにする観点で設定されてきたものです。
厚生年金の標準報酬月額の上限設定の趣旨を明確にした上で、新たなルールにおいても拙速な上限引上げが行われることがあってはならないと考えますが、厚生労働大臣の見解を伺います。
また、今回の改正で適用拡大に関する月額8万8千円の賃金要件の撤廃が行われることも踏まえれば、収入の少ない方でも厚生年金に入りやすくするという観点からも、少なくとも、厚生年金の標準報酬月額の下限の下に健康保険と同様の3等級を加えて、下限の標準報酬月額を5万8千円とするべきです。労働時間要件の引下げと併せて前向きに検討いただけないでしょうか。厚生労働大臣の答弁を求めます。
このように論点が多く残っている中、将来にわたる年金制度の改正を拙速に行うことへの疑問を呈し質問を終わります。
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